(almost) daily corleonis

2025.04.12 Sat.

以前、国立にあった「台形」というお店を訪れたとき、その食事体験に深く感銘を受けた。それ以来、もう一度あの体験をしたくて予約を試みるも、毎回抽選に外れ、なかなか縁がないまま時間だけが過ぎていった。そんな中、最近になってお店が鎌倉へ移転したと知り、「今度こそ」と思っていた矢先、友人から「予約が取れました…!」との吉報が。嬉しさのあまり小躍りし、そそくさと小旅行を決行することにした。

当日は、予約時間の15時に絶対に遅れたくなかったので、混雑リスクのあるバスは避け、特急電車を事前に予約。最寄り駅でコーヒーを片手に改札口の電光掲示板を見上げると、そこには無情にも「遅延」の文字が。かなり余裕を持った行程だったので「20分くらいなら大丈夫」と楽観していたものの、遅延時間はじわじわと伸びていく。計算の結果、60分までの遅れならギリギリ間に合うと分かったが、表示は30分、45分、そしてついに60分を過ぎ、「これはもうダメかも」と眼の前が真っ暗になった。電話でお店に事情を説明すると、スタッフの方が丁寧に案内してくださり、少し落ち着くことができた。方向音痴な私は、「残りの行程で迷わないこと」に全力を注ぎ、持ってきた本は開きもせず、乗り継ぎ駅の地図や動画を繰り返し確認していた。

途中で降りた町田駅のギャルはもうサンダルを履いていた。一方、ボア生地の長袖を着せられていた子どもが暑いとぐずり、お母さんは「朝、時間がなくて、ちゃんとお洋服を選べなくてごめんね」と優しく謝っていた。

次に降りた藤沢駅でNo No GirlsのTシャツを着ていた女の子がいた。カバンからぶら下げたブロマイドは裏側になっていて、階段を登るたびにちらちら見えそうで見えなかった(たぶんNAOKOだったと思う)。

江ノ電に乗り込むと、ようやく少し安心し、「サーフ ブンガク カマクラ」を聴き始めた。静かな車内に一人だけ大きな声で話す男性がいて、毎晩カラムーチョ2袋とコーラ2リットルを摂取していると豪語していた。胃弱なわたしには絶対に成し遂げられないことだなと思いながら、車窓に流れる風景を眺めた。

降車駅からは、頭に叩き込んだ地図を頼りに一目散に走った。結果、15分ほどの遅刻でなんとか一皿目に間に合った。お店の方、そして待っていてくれた友人に心から感謝。運ばれてくる料理はどれも夢のように美しく、ひと口食べるたびにため息が漏れた。

一皿目:地野菜 + 苺 + 生わかめ + ハーブ
五皿目:地魚 + グリーンピース + 真昆布
デザート:ローズマリー + エダムチーズ + 胡桃

満腹で店を後にして、江ノ電沿いを2時間近く散歩した。海の近くで暮らしたことのない私は、海が見えるだけでまるで外国に来たかのような気分になる。湘南ナンバーのアメ車を横目に、いろいろな話をしながらただひたすら歩いた。

江の島が見える

宿泊先は藤沢駅近く。駅の近くのジュンク堂書店へ行きゆっくり本を見て(旅先の本屋は、その地域の本がフィーチャーされているのでおもしろい)、アンソロジー『ロイヤルホストで夜まで語りたい』を購入。友人は平野紗季子の新刊『おいしくってありがとう』を手に取っていた。

夜は、軽く一杯だけと、混醸というナチュラルワインのお店へ。ふらっと入ったにもかかわらず、とても心地よい空間だった。常連さんたちが楽しそうに食事をしている光景に混じり、私たちも乾杯。よく焦り、よく食べ、よく歩き、よく話した一日。夜はあっという間に眠りに落ちた。

突発的な小旅行だったが、本当に豊かな時間だった。鎌倉方面は思ったよりも自宅からアクセスが良いことに気づいたので、またふらりと足を運びたいと思う。